売り出し価格は、不動産会社による査定価格を参考にしていただきながら、最終的には売主様自身に決定していただきますが、
ここで、不動産会社による「査定方法の弱点」についても知っておいてください。
不動産会社が居住用不動産を査定する時は、ほとんどの場合に「取引事例比較法」を用います。
取引事例比較法とは、近隣の条件が似ている物件が過去に売れた金額を根拠とし、今売ったときにいくらで売れるかを推察して査定額を算出する方法です。
過去に売れた「事実」を基に算出するため、中立的かつ実質的な価格の算出が可能ですが、次の2点が弱点と言えます。
1.事例が少ないと精度が落ちる
取引事例比較法では、参考とする過去の事例の数が重要です。
成約事例は多ければ多いほど査定価格の精度は上がりますが、エリアや時期によっては適切な成約事例が取得できないことがあります。
2.過去の事例の”背景”が不明
成約事例を抽出する「レインズ」では、その物件を売却した人の「意向」や「理由」などの背景までは分かりません。
早く売りたい事情があって相場より安く売った人や、高額売却を目指して何年もかけてやっと売却した人もいるかもしれません。
そのため、過去に売れた事例が必ずしも「相場」とは言い切ることができず、その金額を用いて算出する査定価格もやはり相場との乖離がある可能性があります。
上述のとおり、査定価格には絶対的な信頼のおける数値だとは言えません。
そのため売り出し価格を考える上では「売主様の希望」を含めた価格を加味して考えていただきたいです。
不動産会社からの査定価格とその根拠を聞くと「これくらいの価格でなら売れそうだなぁ」という価格が見えてくるものです。
また「この価格では絶対に売りたい」という”下限”もあるのではないでしょうか。
「売りたい価格」と「売らなければならない価格」。そして「売れる価格」。
この3つの価格をあらかじめ明確にしておくことで売り出し価格が決めやすくなるはずです。
もちろん「売りたい価格」での売却を追及すべきではありますが、売り出し価格は売主様のご意向や競合物件のの有無に応じて戦略的に考えなければいけません。
「売却にどれだけ時間が掛かってもいい」と考えている方は少なく、多くの方は希望する売却時期があるものです。
例えば、、不動産会社による査定価格 3,100万円 (※概ね3ヶ月以内の成約を目指す価格)の物件を
「2ヶ月後にはどうしても売りたい」と考えている方が 3,300万円 で売り出すのは少々無謀ともいえるでしょう。
まずは「売れる価格」 3,100万円 で売り出してみて、1ヶ月経過しても反響が得られず残り1ヶ月で売れる見込みがなさそうであれば3,000万円 → 2,950万円 と「売らなければならない価格」に近付けていく、といった戦略が取れます。
あくまでも査定価格は参考値であり、売主様であるあなたのご都合やご意向を優先していただきたい、ということです。
売れる見込みが薄い金額を希望されている場合には根拠を提示しながら、適正価格をお伝えすることもあると思います。
しかしまずは売主様のご希望をお聞かせください。
ご希望に添える形でご売却を目指すのが、私たちの役目です。