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家賃が上がる時代に、地域の住まいはどう変わるのか

カテゴリ:賃貸市場動向


東京都で動き出した「アフォーダブル住宅」という新しい選択肢



都内で住まいを探す人にとって、近年もっとも大きな悩みのひとつが「家賃の上昇」です。

駅に近い、通勤に便利、子育てしやすい、ある程度の広さがある。

そうした条件を満たそうとすると、家賃はどうしても高くなりがちです。

特にファミリー世帯では、単身向けの部屋とは違い、部屋数や面積が必要になります。


そのため、住みたい地域があっても、家賃負担を考えて別のエリアを選ばざるを得ないケースも少なくありません。


こうした状況の中で、東京都が進めているのが「アフォーダブル住宅」と呼ばれる取り組みです。

アフォーダブル住宅とは、直訳すれば「手が届きやすい住宅」という意味です。

簡単に言えば、一般的な市場家賃よりも負担を抑え、子育て世帯などが都市部でも暮らし続けやすくするための住宅です。



公営住宅とは少し違う、民間活用型の仕組み


「家賃を抑えた住宅」と聞くと、公営住宅をイメージする方も多いかもしれません。


しかし、東京都が現在進めているアフォーダブル住宅は、従来の公営住宅とは少し性格が異なります。

大きな特徴は、民間の住宅や資金、運営ノウハウを活用する点です。


行政がすべてを建設・管理するのではなく、民間事業者や金融機関、不動産会社などが関わりながら、既存の住宅や新築物件を活用していく仕組みです。


対象となる住宅も、新築マンションに限られるわけではありません。

中古戸建、既存マンション、空き家、用途を見直したい建物など、さまざまな不動産が活用対象になり得ます。


これは、不動産オーナーにとっても注目すべき点です。

築年数が経過した住宅や、今後の活用方法を検討している不動産が、行政の制度や民間ファンドと結びつくことで、新しい役割を持つ可能性があるからです。



2026年には実際の募集も始まっている


アフォーダブル住宅は、単なる構想ではなく、すでに具体的な動きが始まっています。

東京都は2026年、民間ファンドと連携したアフォーダブル住宅の供給を進めています。


5月には、複数のファンドによる入居者募集が公表され、中古戸建をリフォームした住宅や、新築マンションの一部住戸などが対象となりました。

家賃設定は物件によって異なりますが、一般的な相場よりも抑えた水準で設定されることが特徴です。


対象者についても、子育て世帯や一定の年収要件を満たす世帯など、住宅確保の負担が大きくなりやすい層が想定されています。


また、東京都住宅供給公社、いわゆるJKK東京の公社住宅を活用した取り組みも進められていま

す。

こちらは、子育て世帯や新婚世帯を対象に、一定期間、家賃を減額する仕組みです。

つまり、2026年2月時点では制度の紹介段階だったものが、その後、実際の募集・運用段階へと進み始めています。



千代田区では既存建物の活用にも注目


都心部では、住宅地としての需要がある一方で、家賃や土地価格の高さが大きな壁になっています。

特に千代田区のような中心部では、ファミリー世帯が住まいを確保することは簡単ではありません。

そこで注目されているのが、既存建物の活用です。


空き家や使われ方が変わりつつある建物を、住宅として再生する。
場合によっては、事務所やビルの一部を住まいとして活用する。


こうした考え方は、単に住宅を増やすだけでなく、地域の人口構成や暮らしの継続性にも関わってきます。

都心部で働く人、子育てをする人、地域に長く住み続けたい人。
そうした人たちの受け皿を増やすことは、街の活力を保つうえでも重要です。



オーナーにとっては「収益性」と「社会性」のバランスが課題


不動産オーナーの立場から見ると、アフォーダブル住宅には期待と課題の両面があります。

家賃を通常より抑える以上、単純な賃料収入だけを見れば、一般賃貸より低くなる可能性があります。

そのため、制度を活用する場合には、補助金の有無、改修費、運営期間、対象者の条件、将来の出口戦略などを慎重に確認する必要があります。


一方で、長期的に安定した入居が期待できることや、地域に必要とされる住宅として評価されることは、大きなメリットになり得ます。

特に、築年数が経過した住宅や、一般的な賃貸市場では競争力が落ちてきた物件にとっては、単なる家賃競争ではない活用方法を考えるきっかけになるかもしれません。


これまでの賃貸経営では、「いかに高く貸せるか」が重視される場面が多くありました。


もちろん収益性は大切です。

しかし、これからは「誰に、どのように住んでもらうか」という視点も、より重要になっていくのではないでしょうか。


アフォーダブル住宅の取り組みは、行政だけの話ではありません。

東京都のように、民間ファンドや不動産事業者と連携する仕組みが広がれば、民間オーナーが所有する住宅や建物も、制度の対象として検討される可能性があります。

もちろん、すべての物件がすぐに活用できるわけではありません。立地、建物の状態、改修のしやすさ、賃料設定、入居者ニーズなどを総合的に見る必要があります。




それでも、都内で家賃が上がり続ける中、子育て世帯や若い世代が暮らし続けられる住宅をどう確保するかは、今後ますます大きなテーマになります。


アフォーダブル住宅は、まだ始まったばかりの取り組みです。


しかし、賃貸経営や不動産活用を考えるうえで、「地域に必要とされる住まいをどうつくるか」という視点を持つことは、これからの時代に欠かせないものになっていくでしょう。

所有している不動産を、単に貸す・売るだけでなく、地域の暮らしを支える資産としてどう活かすか。

アフォーダブル住宅の広がりは、そんな問いを私たちに投げかけているように感じます。



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