こんにちは、アル中映画マニアですです。
月初の数字に追われつつ、現実逃避気味に映画を観ました。タイトルに惹かれてふらっと入った一本なのですが、思いのほか心を掴まれてしまったので、共有させてください。
作品名は『1月と2月どっちが寒い?』。
一見すると、どうでもよさそうな問いかけです。正直、僕も「どっちでもいいだろう」と思っていました。でも観終わった今は、この問いが胸の奥に静かに残っています。
舞台は雪の多い地方都市。主人公は、都内の出版社に勤める29歳の会社員・秋庭湊(あきば みなと)。仕事は順調だけれど、どこか満たされない。恋人とも別れたばかりで、年明け早々、彼は有休を使って実家に帰省します。
きっかけは、母からの一本の電話。
「古いもの、少し整理しておきなさいよ」
実家の自室で見つけたのは、高校時代のノート。そこには、クラスメイトだった朝倉冬花(あさくら ふゆか)の文字で、ぽつりと書かれた一文が挟まっていました。
——「1月と2月、どっちが寒いと思う?」
それは文化祭の準備期間、教室の隅で二人が交わした、たわいない会話の延長でした。けれど湊は、その問いにちゃんと答えた記憶がない。むしろ、何か大事なことを言いそびれた感覚だけが、うっすら残っている。
映画は、現在の湊と、高校時代の回想が交互に描かれていきます。
当時の湊は、どこか冷めていて、人と深く関わることを避けていました。一方、冬花は、まっすぐで、少し不器用で、でも誰よりも季節の変化に敏感な女の子。
「1月は新しい年だから寒い」
「2月は終わりが見えるから寒い」
そんな他愛のないやり取りの中に、二人だけの距離感が、ゆっくりと育っていきます。
物語は、湊が冬花の“その後”を知ろうとする現在パートと、過去の冬が重なり合いながら進みます。ただの再会ものでも、恋愛映画でもありません。
これは、「あのとき言えなかったこと」と向き合う物語です。
この映画、派手な展開はありません。
大事件も起きません。どちらかといえば静かで、雪が降り積もる音を聴くような作品です。
でも、不思議と目が離せない。
たぶんそれは、誰にでも思い当たる「取りこぼした時間」が描かれているからだと思います。
仕事をしていると、日々は判断の連続です。
返信する/しない。
言う/言わない。
会いに行く/行かない。
そのときは小さな選択でも、あとから振り返ると、取り返しのつかない分岐点になっていることがある。
湊が抱えているのは、まさにそれです。
何かを間違えたわけじゃない。でも、何かを“選ばなかった”。
その感覚、社会人なら少しは覚えがあるんじゃないでしょうか。
そして冬花という存在が、本当に絶妙です。
明るすぎない。弱すぎない。
ただ、「ちゃんと寒さを感じられる人」。
住野よるさん原作っぽい、と言ったら伝わるでしょうか。
日常の会話が、ふと胸に刺さる。
比喩が少しだけ詩的で、でも決して大げさではない。
登場人物たちは特別じゃないのに、どうしようもなく愛おしい。
個人的に好きだったのは、湊が雪道を歩きながら、「寒いな」と呟くシーン。
その一言に、10年分の後悔と、ほんの少しの希望が滲んでいます。
観る前は、軽いラブストーリーかと思っていました。
でもこのタイトルは、「気温」の話ではありません。
人はいつ寒くなるのか。
始まりのときか、終わりが近いときか。
それとも、隣にいたはずの人がいなくなった瞬間か。
映画を観終わっても、はっきりした答えは提示されません。
でも、観た人それぞれの中に、そっと答えが置かれる感覚があります。
ちなみに僕は、帰り道で思わず空を見上げました。
冬の空って、こんなに高かったっけ、と。
こんな人におすすめ
・最近、少し立ち止まりたい人
・昔の友人の名前をふと思い出した人
・忙しさの中で、感情を後回しにしている人
・静かな映画が好きな人
大きな感動で泣かせる映画ではありません。
でも、気づいたら胸の奥がじんわり温かくなっている。
そんなタイプの作品です。
オチには触れません。触れられません。
ただ一つ言えるのは、最後の数分間、劇場がとても静かだったこと。
エンドロールが流れても、誰もすぐには立ち上がりませんでした。
もし少しでもタイトルが気になったなら、ぜひ観てみてください。
そして観終わったら、こっそり教えてください。
あなたは、1月と2月、どっちが寒いと思いましたか。
P.Sカロ木ウル土






